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外国人労働者数も過去最多――「やさしい日本語」と「公平な耳」

2020年2月1日

【中国とベトナムでほぼ半数】

前々回、2019年の訪日外国人客数が
前年比2.2%増の3,188万2千人となり、
過去最高となった話題を取り上げました。

今回は外国人労働者の話題です。

厚生労働省は先日(1/31)、2019年10月末時点の外国人労働者は、
前年同期比13.6%増の165万8,804人だったと発表しました。
7年連続で増え、企業に届け出を義務づけた2007年以降で最多です。

国別では、中国が41万8,327人でトップながら、
ベトナムが大きく増え、40万1,326人とほぼ同規模になり、
両国でほぼ半数を占めました。

フィリピンやネパールなどアジア地域も増え、
今後も、慢性的な人手不足に対処するため、
外国人労働者の受け入れは増加すると見込まれています。

【言葉の壁を乗り越える工夫】

日本に住む外国人にとって大きな問題は、
言うまでもなく「言葉」です。

なかには、とても流暢に日本語を操る方もいて
(しかも日本の文化にとても詳しい!)、
その努力には心より敬意を表しますが、
多くの外国人は日本語に悪戦苦闘しているのが実情でしょう。

じゃあ、世界共通語の英語で……と簡単にはいきません。
旅行などの短期滞在はともかく、定住外国人の多くは、
英語が堪能ではないという調査結果もあるそうです。
加えて周りの日本人も英語がおぼつかないとなると……。

そこで注目を集めているのが、「やさしい日本語」。
ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
「日本語が母国語ではない人が情報を理解しやすいよう、
必要最低限の語彙や文法を選んで体系化したもの」です。

英語にも、ネイティブではない人にわかりやすく伝えるため、
「Plain English」や「Special English」などがありますね。

「やさしい日本語」が誕生したのは、
1995年1月の阪神・淡路大震災がきっかけだそうです。
外国人住民に大事な情報がなかなか伝わらなかったんですね。

今では、例えば「避難場所」と「にげるところ」が
併記されるようになりました。

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【お互いさまの気持ち】

日本在住の外国人に、正しい情報を
わかりやすく伝える必要があるのは、
一番に災害時、次は日常生活のルール
(ゴミ出し日とか禁止事項とか)でしょうか。
それに、出産や子どもの養育、福祉など行政面でも、
円滑な対応が求められますよね。

今でこそ官民問わず、それぞれの母国語対応に
取り組んだりもしていますが、
なかなか難しい面もあるようです。

横浜市は、2019年に初めて外国人の人口が
10万人(総人口の3%弱)を超えました。

市民局の大塚尚子広報課長は、
「外国人住民が10万人を超えると、
情報を住民の母国語による多言語で伝えるのは
言語数が多すぎて現実的ではない」とし、
「日本語でやさしく伝えることが重要になる」と
指摘しています。(2019.12.11付日経)

『やさしい日本語――多文化共生社会へ』などの著作もある、
一橋大学国際教育センターの庵功雄(いおり・いさお)教授によれば、
「やさしい日本語」に決まった形はなく、
最も重要なのは、相手の立場に立って考えられる
“お互いさまの気持ち”とのこと。

その際の大切なポイントに、
「公平な耳」という理念があるそうです。

庵先生は言います。
――例として、タイから日本に来た人が、
「わたチ」と話しているのを聞いて、
日本人が馬鹿にしたというエピソードがあります。

これは単に、タイ語では「し」と「ち」を区別しないが、
日本語にはその区別があるというだけの話なのに、
つい差別的な見方をしてしまう。

いくらでも逆の例があることは、
外国語を習った人なら理解できるでしょう。

「わたチ」という発音を笑いそうになった時、
一歩立ち止まって、自分が同じことをされたら
どう感じるだろうか、と考える。

それが「公平な耳」という理念です。
多文化共生はそうしたところから始まると私は考えます――

忘れたくない、というより、
思考回路の一部になるよう心がけたいな、と思った私でした。

〈イラストは「うた♪くまさん」_イラストACより 〉