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大学共通テストに英語民間試験導入が見送り_「話す」偏重は危険か

2021年6月1日

【“外野”の声に振り回される?】

既報の通り、入試改革の目玉だったはずの
英語民間試験と記述式の導入が見送りの方針になりました。
22年度からの新しい学習指導要領で学ぶ高校生が受験する、
25年以降のテストから実施を予定していましたが、
民間試験対策や、記述答案の採点などで公平性を確保するのが困難、
というのが主な理由とされています。

文部科学省の有識者会議では、英語力や表現力の測定に
民間試験は重要と認めた上で、大規模な共通テストではなく、
各大学の個別入試での活用を後押しする仕組みを設ける提案が
相次いだそうです(5.24付日経電子版)。

長年英語を学校で勉強しているにもかかわらず、
まともに会話一つできないのでは意味がない、
という憤りにも似た勢いで進められた“改革”でしたが、
「話す力」に重きを置き過ぎて前のめりにつまずいた格好でしょうか。

昨年秋に刊行された鳥飼玖美子+斎藤兆史『迷える英語好きたちへ』で、
英文学者(東京大学大学院教育学研究科教授)の斎藤先生は、
次のように述べています。

――通詞に代表されるように、日本の語学の達人が実践してきた勉強法は、
まずは文法と読解で力をつけて、その後で聴解や会話に進むというのが
伝統的な流儀でした。

ところが、いつしか「そんなやり方では話せるようにならない。
文法や読解ばかりやらせてきた日本の英語教育は間違いだ」
という主張が優勢になってしまった。

こうした主張をするのは大抵、英語の専門家ではありません。
経済界の重鎮だったり、政治力があって発言力が強く、
英語にルサンチマンを持った人たちです。
そして「おかしい、おかしい」という主張だけが通って、
一連の改革が行われてきた。――

また同著で、通訳者・教育者の鳥飼先生(立教大学名誉教授)も、
「読む」「聞く」という受容力を駆使して、
「書く」「話す」という発信力につなげることで、
総合的な言語力を養うのが外国語学習の基本、とした上で、
――日本でおまじないのように唱えられている「四技能」は、
「話せるようになりたい」という願望がこもっているのですが、
だからといって「四技能」を隠れ蓑に「話す」ことだけ学校でいくら教えても、
せいぜい初歩的な決まり文句を練習するだけで、
仕事に使える英語までは期待できません。
ましてや、これまでいくらおまじないを唱えても効き目がなかったからといって、
怨念を大学入試にぶつけてもご利益はありません。

英語民間試験を大学入試に使えば効き目があるのなら、
これまでTOEFLや英検を受けてきた何十万、何百万人という日本人は、
今ごろ英語はペラペラなはずです。
その人たちの声がさっぱり聞こえてきませんが、
どこにいってしまったのでしょう。――と指摘しています。

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【「使える≒話せる」は中身あってこそ】

個人的には、共通テストに民間試験導入見送りは、
強引な政策推進の失敗と簡単に片づけられない面もあると思います。
制度の不公平性は批判されましたが、
英語が使えるように目指すこと自体を真っ向から否定する声は、
ほぼほぼなかったと見受けられます。

問題はその方法論。
「使える≒話せる」も、中身を伴ってこそです。
中身を伴うには、読み書きをおろそかにしてはおぼつかない。
斎藤先生ではありませんが、江戸時代の通詞以来の伝統的な勉強法には、
れっきとした意義があるということでしょう。

私たちも、留学前に基本的な語彙や文法をおさらいしておくことを勧めるのは、
日本では得難い圧倒的な「聞く」「話す」機会をより有効にするためです。
日本にいてもできることをわざわざ海外でやるのは、とてももったいないですからね。

入試改革で振り回される先生や親御さん、
そして何より当事者の生徒さんたちは大変ですが、
本サイトをご覧になっているような生徒さんは、
入試で高得点をとるのもさることながら、
人生の可能性をグンと広げるために英語をマスターしたいはず。

弊社も留学や海外研修を通して、その大目標達成に
少しでもお役に立てる日が早く戻ってくることを、
心から願わずにいられません。