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「弘法にも筆の誤り」、西洋では誰?

【書の達人でもあった弘法大師】

今月24日まで東京国立博物館で開かれている
「顔真卿 王羲之を超えた名筆」展。
先日、中国に造詣が深い先輩と会ったときその話になり、
顔真卿のすばらしさを熱っぽく語っていました。

私も高校時代、書道の授業を選択していて、
顔真卿のりりしい楷書を学んだことがあり、
すっかりその字に魅了されました。
まあ、いくら練習しても、少しも近づけませんでしたが……

日本にも書の達人、いわゆる三筆と称される人たちがいます。
空海、嵯峨天皇、橘逸勢(たちばなのはやなり)がそうです。

特に空海(弘法大師)は有名で、
「弘法筆を選ばず」「弘法にも筆の誤り」といったことわざにも登場します。

わざわざ説明するまでもないでしょうけど、
前者は、本当の名手はどんな道具でもうまく使いこなす、
後者は、どんな名人でも時には失敗することもある、
というような意味ですね。

さて、日本では達人の代表として空海が選ばれていますが、
英語ではどうなっているんでしょうか?

高野山

【ホメロスが達人代表】

「弘法筆を選ばず」は、英語では、
「The cunning mason works with any stone.」
(腕のある石工はどんな石でも仕事をする)と言い、石工が登場します。
具体的な個人名は出てきません。

一方「弘法にも筆の誤り」は、英語では、
「(Even) Homer sometimes nods.」
(ホメロスでさえも時には居眠りをする
→時には居眠りをして作ったような凡句がある)と言い、
こちらはギリシャの大詩人であるホメロスが登場します。
英語圏で達人・名人と言えばホメロスなんですね。

ホメロスは、西洋文学最初期の叙事詩『イリアス』や
『オデュッセイア』の作者とされている人物。
現代でも使われる「トロイの木馬」や、
弱点を意味する「アキレス腱」の出典はこれらの作品です。

空海とホメロス、時代こそ違え、ことわざにも名を残す偉人ですね。

さて、西洋で書道にあたるものはカリグラフィー。
書道に上手・下手があるように、当然カリグラフィーにもあるんでしょうけど、
私はどちらも目利きに自信がありません。

※参考文献:牧野髙吉『日英の発想の違いが面白い! 英語対訳で読む 日本のことわざ』(実業之日本社)

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