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「Go To」がうまくいかない本当の理由――「ジレンマ」ではなく「トリレンマ」

【「Go To」は場当たり的か】

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、
「Go Toトラベル」や「Go Toイート」にも
一部制限がかかるようになりました。

実際に助かっているという声がある一方で、
深い考えもなく、とりあえずやっているという、
いわゆる場当たり的な政策だという批判も多いようです。
国と地方自治体の「すれ違い」も気になるところ。

立場によって意見は分かれるでしょうけど、
感染抑制と経済を回すことの両立は、困難を極めますね。

個人的には、本欄11月4日付「新型コロナ、注意すべきは場所ではなく行動」
でも書いたように、一人一人が行動に気をつければ、
感染抑制と経済活動は必ずしも矛盾しないと考えていますが、
先日、「なるほど!」と思った見解に出合いました。
トライアングルチャート
【問題の本質はジレンマではなくトリレンマ】

先月刊行された、作家の橘玲さんの『文庫改訂版
事実vs本能 目を背けたいファクトにも理由がある』で、
橘さんは次のように指摘しています。

「Go Toトラベル」が場当たり的になってしまうのは、
新型コロナ対策を「感染抑制」と「経済活動」のジレンマ
(あちらを立てればこちらが立たずのトレードオフ)にしてしまったから。

問題の本質は、「感染抑制」「経済活動」「プライバシー」の
トリレンマ(同時に満たすことができない三択)であること。
3つのうち1つをあきらめれば、残りの2つを満たすことができる。

日本では、本来トリレンマである問題をジレンマとして扱い、
感染者が増えると亡くなる人も増える VS
経済を犠牲にすると不況で自殺者が増える、
というような不毛な対立を延々と続けている。

中国のようにプライバシーを(一定程度)放棄して、
感染者と濃厚接触者を特定し強制的に隔離すれば、
経済活動を犠牲にせずに感染を抑制することが可能になる。

「感染抑制」と「経済活動」の二択ではなく、
もうひとつの選択肢(「プライバシー」の放棄)があるのだが、
日本社会ではそれに触れることを許さない“空気”が強い。
ここを理解しないと、誰が政権を担っても同じことの繰り返しになる、と橘さん。

なお橘さんは、誤解のないようにと断った上で、
「中国のような超監視社会になるべきだ」
と言っているわけではない、としています。
ただ、日本は「民主国家」なので、
国民の多くがそれを望むなら別にかまわないとも。

こうした見方には賛否両論ありそうですが、
個人的には、「難しい、難しい」ばかりで
一向に結論が出ない問題のように見えた
「感染抑制」と「経済活動」の両立を、
「プライバシー」も加えたトリレンマとして捉え直すと、
問題が相当整理できるように思いました。

仮に「プライバシー」の保護は絶対に譲れないとすれば、
「感染抑制」か「経済活動」のどちらかは
あきらめないといけないということですね。

「トリレンマで一気に解決!」というわけではありませんが、
有効な選択肢を1つ増やした上で、
3つのうち1つを犠牲にすれば2つは実現できる、という発想は、
問題の切実度が非常に高い上に“袋小路感”が強いコロナ禍のような状況では、
知っておいていい考え方ではないでしょうか。

 

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